スタンダードチャータード、UAEで銀行口座からBTC・ETHの直接売買を開始

スタンダードチャータード、UAEのプロ投資家顧客向けにBTC・ETHの現物売買を開始
既存のドル・ディルハム口座で24時間取引、別途手数料はなく価格に銀行のマークアップを含む
銀行内で保管・決済するクローズドループ型で、外部ウォレットへの出金はできない
英国系のスタンダードチャータード銀行は10月14日、アラブ首長国連邦(UAE)で富裕層顧客が銀行口座からビットコイン(BTC)とイーサリアム(ETH)を直接売買できるサービスを始めたと発表した。シンガポールで公表したプレスリリースで、同行として世界初のサービスであり、国際銀行がUAEで提供する初の暗号資産取引サービスだと説明した。
ウォレット不要で既存口座から取引、コインは銀行の外に出せない
顧客は別途ウォレットを作ったり外部の取引所に登録したりせず、既に使っているスタンダードチャータードのドル建て・ディルハム建て口座から注文を出す。約定から保管、決済までを銀行内で完結させる「クローズドループ」型の仕組みで、同行は外部ウォレットを経由することで生じるリスクを抑えられるとしている。
その分、制約もある。UAE法人の商品案内ページによると、銀行で購入した暗号資産を他所へ送ることも、外部の暗号資産を銀行に移すこともできない。注文は成行注文のみで、顧客が見積もりを依頼すると銀行が価格を6秒間保持する方式(RFQ)で約定する。6秒を過ぎると新たな見積もりが提示され、約定した注文は取り消せない。別途の取引・保管手数料はかからないが、銀行は流動性供給業者から受け取った見積もりに独自のマークアップを上乗せして価格を提示するとしている。売買はスマートフォンアプリ「SC Mobile」で24時間でき、売却代金は指定した口座にリアルタイムで入金される。
条件は「プロ投資家」の区分
サービスはまずUAEで、同行が「プロ投資家(Professional Investor)」に区分した顧客のみが対象となる。登録手続きを終えるには、投資リスク診断が同行の基準を満たし、税務上の居住地情報と米国の外国口座税務コンプライアンス法(FATCA)の申告が最新である必要がある。定期預金口座や共同名義口座、ドル・ディルハム以外の通貨の口座は、取引資金の入金にも売却代金の受け取りにも使えない。同行は他の地域にも順次広げる計画を示したが、時期は明らかにしなかった。
規制はドバイ仮想資産規制庁(VARA)が担う。同行のUAE法人はVARAからブローカー・ディーラー業務の認可(番号VL/26/08/003)を受けた。サービスは同行のウェルス・リテール部門とコーポレート・投資銀行部門、ベンチャー組織SCベンチャーズが出資するゾディア・マーケッツ(Zodia Markets)が共同で構築した。
「顧客はアクセスだけでなく、規制を受けた信頼できる機関を通じて投資することで得られる安全性、信頼、安心感をますます求めている」
サミール・スベルワル スタンダードチャータード ウェルス・ソリューション、リテール商品、データ&アナリティクス担当グローバル責任者
ETF・デリバティブから現物の直接売買へ
スタンダードチャータードはこれまで富裕層顧客に対し、株式取引プラットフォームを通じた暗号資産上場投資信託(ETF)、仕組み商品、店頭デリバティブでのみ暗号資産価格への投資手段を提供してきた。今回は暗号資産そのものを売買する段階に広げた形だ。UAE・中東・パキスタン担当のローラ・アブ・マネ最高経営責任者(CEO)は、UAEを選んだ理由としてイノベーションに先進的な姿勢と強固な規制環境を挙げ、UAEは同行の世界4大ウェルス拠点の一つだと述べた。
同行は今回のサービスを、カストディ(保管)・取引・トークン化にまたがるデジタル資産事業の一部と位置付けている。SCベンチャーズ系のゾディア・マーケッツとトークン化プラットフォームのリベアラ(Libeara)がこの事業を支える。2日前の12日には、ドバイ国際金融センター(DIFC)支店で機関顧客向けにリップルの米ドル建てステーブルコインRLUSDのカストディを始めたと発表していた。こちらはドバイ金融サービス機構(DFSA)の監督下にある機関向けで、今回のサービスはVARAの認可を受けた個人富裕層向けという点が異なる。
商品案内ページには両銘柄の基本情報表も掲載された。ビットコインは2009年1月3日発行、最大供給量2100万BTC、イーサリアムは2015年7月30日発行、最大供給量の上限なしと記載している。時価総額や流通量、過去最大の下落率はコインマーケットキャップとヤフー・ファイナンスへのリンクで代え、同行は外部データを検証・保証しておらず投資助言ではないと付記した。
韓国時間14日午後8時37分ごろ、バイナンスでビットコインは8万3440ドル、イーサリアムは2503ドルで取引された。24時間の変動率はいずれも-0.1%前後だった。同時刻、アップビットのウォン建て市場ではビットコインが1億1252万ウォン、イーサリアムが337万7000ウォンで、Coinyongの価格集計によるアップビット基準のビットコインのキムチプレミアム(韓国の取引所価格と海外価格の差)は約0.57%だった。